モロッコ遊牧民探訪記

遊牧民との生活。ロバとの旅の記録

2018-01-01から1年間の記事一覧

最後のピンチ

遊牧民の友人にロバを託し、旅を終えるはずだった。なのに、彼らに会いに行くことができない。 トドラ渓谷に到着して四日目、私はいよいよ遊牧民がすむ岩山を登ることにした。彼らの家はここからロバ道を二時間ほど登ったところにある。宿の前で荷積みをして…

トドラ到着

無事、大西洋まで辿り着き、アトラスの旅は終わった。その後、車を何台も乗り継ぎ、三日前、一年ぶりにトドラ渓谷に帰ってきた。ロバを運ぶとなると通常、数万円はかかるはずだが、驚くべきことに、車はすべて警察が無料で手配してくれた。 今年一月から三月…

殺害事件に思う

18日未明にアトラス山中で北欧ツーリスト二人が殺害された事件で、19日までに容疑者四人が逮捕された。私も二ヶ月以上、アトラスを単独で旅し、被害者と同じくテントの中で寝ていたところを強盗犯に襲われた経緯があるので、とても他人事とは思えず、ここ数…

北欧の女性旅行者が殺害されたらしい

2018年12月中旬、トドラ渓谷でゲストハウスを営む日本人・三原典子さんから驚くべきメールが届いていた。私はその時、モロッコ南西部アガディールにいた。 昨日 イムリルでノールウエイの女子学生ふたりが多分テントを張って寝ていたところ襲われて殺…

アトラスの終点

12/13 ついにティズニットに到着した。この町はアンチアトラス山脈の西の終点、つまり旅の終着点だ。ミデルトから歩いた総距離は1400キロくらいだろうか。これまで視線の先には必ず山があったので、今日は変な気分だった。目の前にあるのは平坦な荒野だった…

トラディショナル・ハウス

12/6 タフロウト この日はロバの鞍を修理するため町に出かけた。町中をロバと歩くと注目を浴びるため気が進まないが、鞍は8kgくらいある。ロバに乗せて行った。ロバはこの二日間、木に繋ぎぱなしだったので、久しぶりの散歩に少しはしゃいでるように見えた。…

ロバを洗う

12/3-4 アンチアトラスの中心地、タフロウトに到着しました。緊急で寄ったマラケシュを除けば、出発地のミデルト以来の大きな町。カフェやレストラン、土産物屋もたくさんあり、やっぱり町は楽しい。 タフロウトにはキャンピングカーでやってくるヨーロピア…

被害は防げたのか

あの強盗被害は防げたのか。私の行動に間違いはなかったのか。今後、海外で野宿を伴う旅を考えている人にも参考になるように、私の考えをまとめておきたい。 被害にあった後、旅慣れた友人からは「荷物を見せるなんて警戒心が足りない」と言われた。これには…

犯人発見?

◻︎トゥルエットを出発した翌日はあられ混じりの雨だった。雨宿りでカフェに立ち寄り、マラケシュで新しく買ったiPhoneを開くと、アップルから一通のメールが届いていた。5日前に盗まれたipadの居場所が分かったという内容だった。◻︎私は電子機器に疎いため詳…

再出発

マラケシュに来るのは今回が3回目だ。銀行で金を下ろし、少し街をぶらついてみた。定宿にしている安宿や足繁く通った飯屋、スーク(市場)の連中の顔ぶれ、「アッラー」と叫びながら物乞いする盲人…何もかも初めてこの町に来たときと変わらない。おそらくこの…

強盗の後に

11月中旬の、標高2670mの山中である。気温は氷点下近くまで下がっていた。2人組に襲われた後、外に散乱した荷物を整理する気力も湧かず、ぼろぼろのテントの中に入った。寝袋と毛布二枚は無事だった。それでも明け方には霜がおりてくる。フライシートはもは…

強盗に襲われました

11/10深夜、男2人組に寝込みを襲われました。 場所はタムダ湖(Lake Tamda)。ワルザザートから50キロほど北にある、標高2670mの山中にある小さな湖だ。人里から5時間以上離れており、ふつうなら、夜に人が来るはずがない場所である。私は湖畔にテントを張り…

川渡りの少女

◽️旅を始めて3日目。その日は雨だった。谷間に続く道が突然途切れ、目の前を川が横切っていた。増水したせいで道路が冠水しているのだった。流れが速く、ロバは怯えて前に進もうとしない。他に渡れそうな場所がないか川沿いを歩いたが、切り立った崖に阻まれ…

ジュラバ

◽️ モロッコのおじさんがみんな着ている民族衣装・ジュラバ。私は前回の旅でこれを買い、すっかり気に入ってしまった。全身をすっぽり包み込んでくれるから暖かいし、風が強い日にはフードをかぶり、日中の強烈な日差しから身を守ってくれる。不思議なことに…

イミルシル到着

一週間かけてイミルシルに辿り着いた。私にとって四度目のイミルシルだ。 その間、いくつものベルベル人の村を通り過ぎた。どの村もきれいな小川が流れており、ポプラは黄色に染まり、真っ赤なリンゴがたわわに実っている。地面に落ちたリンゴは拾って食べて…

ロバを買う

10/15 フェズに到着した私は、すぐにバスに乗ってミデルトに向かった。ミデルトは標高1500メートルの高原にある人口約4万人の町である。この町で私はロバを手に入れ、旅をスタートさせる。タイミング良く翌日は週1回のスーク(青空市場)が開かれ、家畜の売…

12日出発。ルート変更

ようやく航空券をとった。今月12日関空発、翌朝バルセロナ着。早朝モロッコのフェズに飛ぶ。当初は大西洋側のアガディールでロバを買いアトラスを東に縦走する計画だったが、ロバとともに海抜0メートルから標高2,3千メートルまで上るのは難しそうなの…

またモロッコに行きます

もう一度モロッコに行きます。まだ航空券はとっていませんが、10月ごろを予定しています。期間は半年ほどを予定。はじめにロバを買って、アトラス山脈を横断しながら、ベルベル人の集落を訪ね歩こうと思っています。そして、最後にイハルフやアハマドたち…

砂漠>山?

散歩から帰ってくると、家の前に見慣れぬジープが一台、止まっていた。別にこの辺りで車を見ることは珍しいことではない。キャンプ地で働くサルムの親戚が二日に一回は車で様子を見にくるし、レンタカーに乗った欧米人観光客が道を尋ねるため立ち寄ることも…

いのちの水

砂漠でも遊牧民が生活できるのは、水があるからだ。ここでは雨はめったに降らないが、アトラス山脈などに雨や雪が降ると、長い時間をかけて砂漠の地下水となる。これが彼らの生活を支えている。 井戸はサルムの家から300メートルほど離れた場所にある。屋…

砂漠ツーリズム

私が今回お世話になった一家の主は、サルムという。夜遅く、飛び込みで訪れた私を、快く受け入れてくれた50代後半のベルベル人だ。しかし、サルムは2日目の正午ごろ、ここから10キロほど離れたシェガガ砂丘のキャンプ・サイトに行ってしまった。シェガ…

砂漠の放牧

砂漠の遊牧民の暮らしは、驚くことばかりだった。 例えば、放牧のやり方だ。私がお世話になったサルム家には、約100匹のヤギがいた。家から50メートルほど離れた場所に、石を積んで作った囲いがある。中にはエサとして草が敷かれているが、出入り口に柵…

遊牧民の"家"へ

ヤヤと連絡がとれなくなったため、別の手段をとることにした。私には一つの当てがあった。それは、マアミドについて事前に調べていたとき見つけた、ある夫婦の世界一周ブログだった。その夫婦は、マアミドのホテルで値切りに値切った結果、シェガガ砂丘の1…

最果ての村

ザゴラからマアミドまでの約100キロを、私はタクシーで行くことにした。とはいえ、この二つの町を結ぶ一本道に、車がそう多く走っているわけではない。マアミドから先は町もないから交通量は限られている。この日は朝からザゴラ近郊でスークが立っていた…

一冊の本(in ザゴラ)

北側から遊牧民の家とシェガガ大砂丘を望む。この日は風が強く、砂丘はかすんで見えた その日はテントが揺れる音で目が覚めた。ドアを開けると、外はまだ薄暗かった。冷たく張り詰めた空気を頬に感じた。寝袋に潜り直した。しばらくすると何者かが紙袋を漁っ…

サガロの奥深くへ

イガズンからイグリに続く道のり 「山脈」というと、「緑深い山々」というイメージを持っていた。しかし、モロッコのサガロ山脈は、水気がない、木一つ生えていない荒涼とした土地だった。山というより、砂漠。サガロとは、ベルベル語で「干ばつ」を意味する…

ベルベル人の小さな集落

モロッコには、ピストと呼ばれる未舗装道路が山や砂漠などに存在する。地平線まで細い砂利道がずっと延びている。その先に何かがあるとはとても思えない。だが、あるのだ。それは、ベルベル人の集落に続く道だ。もともと北アフリカの先住民族であるベルベル…

ネコブの日本人

サガロ山脈を抜けて辿り着いたネコブ(Nkob)の周辺も、一面の銀世界が広がっていた。砂漠に近いと聞いていたので、私は最初、そこがネコブだとは信じられなかった。「この町で雪が降ったのは初めてだ」。町で会った誰もがそう口にした。 地面が濡れたネコブ…

50年に一度の大雪

朝、雪が落ちる音で目が覚めた。ドアを開けると、猛吹雪。昨夜は雪など全く無かったというのに、一晩にして、ひざ丈まで積もっている。強風で目も開けていられないほどだ。1月29日。モロッコ南部では50年ぶりの大雪が降った。私はトドラ渓谷から75キ…

ラバとロバ、それから犬の話

ラバとロバ。食糧や水を山の頂上に運ぶための、欠かせない生き物だ。アハマド家が所有するのはラバ1頭とロバ4頭。1頭でも死ぬと、生活への大きな打撃となる。1頭の値段は1000DH(約1万2千円)前後。それは彼らの全財産に匹敵する。 最も重要なの…