モロッコ遊牧民探訪記

遊牧民との生活。ロバとの旅の記録

2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

放牧の風景

遊牧民との暮らしは、透明感に満ちていた。標高1850メートルの頂上付近にあるここでは、流れる雲と広大な青空を我がものにできる。中でも放牧の風景は美しい。私たち以外には誰もいない岩山を尾根伝いにゆっくりと歩く。お昼になると、お茶をつくり、パ…

物を大切にする

ノマドは物を大切にする。最たるものは水の扱い方だろう。たとえば、観光客が10人登ってきて、お茶を飲んでいったとき。彼らが帰ると、アハマドは10個のグラスを並べ、一つのグラスに2センチほどの水を入れてゆすぐ。その水はそのまま、次のグラスへ移…

山羊の解体

今日は山羊を解体してもらう。正午ごろ、日本人観光客が7人、山を登ってきた。前日、ティスギ村まで下りたとき、典子さんの宿に泊まっていた人たちを私が誘ったのだ。 山羊の解体に立ち会うのは、今回が2回目。1回目はタムタトゥーシュ村の別のノマド宅で…

羊のスーク

トドラ渓谷から約20キロ離れたティネリールでは、毎週木曜と土曜日にヒツジやヤギのスーク(市)が開かれる。トドラ渓谷のノマドたちは、金が必要になるとスークに行き、ヒツジやヤギを売っていくばくかの金を得る。しかし、アハマド家では当分ヒツジが売…

スークへ

前回は私の思い込みから空振りに終わったスーク(青空市場)への買い出し(そのときの記事はこちら)。起床は午前5時半。イハルフとともに岩穴でお茶とパンだけ食べ、6時半ごろ出発した。外はまだ真っ暗だ。 出発する際、イハルフは外に繋いでいたロバ4頭…

「ノマドはつらい」

ノマドにインタビューしてみようと、日本を出る前から考えていた。ノマドは自分たちの生活をどう思っているのか、彼ら自身の言葉で聞いてみたい。しかし、私はまだベルベル語が堪能ではないので、ティスギ村にすむベルベル人に通訳を頼むつもりだった。そこ…

「羊が死んだ」

朝、テントから出ると、アハマドが体育座りでじっとしているのが見えた。私が近づくと、アハマドは傍らを指をさして言った。「インモート、ウッリィ(羊が死んだ)」。見ると、二匹の子羊が横たわっていた。昨晩の冷え込みに耐えられず、死んだのだ。二匹と…

最もキツイ仕事

この日はイハルフのアゴリ採りに同行する。 アゴリは、穂はないがイネに似た植物の名前だ。羊、山羊、ロバ、ラバ、すべての家畜のエサとなる。ただし近くの山には生えていない。そのため週2回、片道2時間以上かけて採りに行く。体力的に最もきつい仕事だ。…