モロッコ遊牧民探訪記

遊牧民との生活。ロバとの旅の記録

早く出発したいが・・・

 ・・・結局、今年旅立つことは見送ったのだった。

 出発地のトルコは、すでに自由に旅行ができる。けれどイランはツーリストビザの発行を中断しており、再開の気配がない。一方、ウズベキスタンはもう旅行できそうだ。もしかしたら、行ってみたらどこも案外旅行できるのかもしれない。最近はコロナ禍だからこそ行く意味があるんじゃないかとも思い始めている。

 しかし、もし国境が閉じていたり、ビザが下りなければ、ロバとの旅は行き詰ってしまうので、踏ん切りがつかない。幸いなことに、効力は未知数ながらワクチンが完成し、来年夏までに接種できそうという。遅くても来年夏までに・・・という希望を胸に、準備を進めている。

 私生活でいえば、今は小さな新聞社で記者として働いている。この夏、釣りを覚えたことで生活はがらりと変わり、暇ができたら釣りばかり。これまで竿を持って旅行しなかったことを後悔しているし、今度は絶対に持っていこうと思っている。

 最後に、ぜんぜん更新していないブログですが、今も1カ月で延べ300人以上のアクセスがあります。励みになっています、ありがとうございます。

出発はトルコ

 最近暇です。

 去年の秋ごろから、今時期に旅するつもりで生きてきたので、張り合いがないというか。テレワークと言いつつ、自宅で世界地図や海外ニュースを眺めて過ごす日々。無為に過ごすのも嫌いではないんですが、見通しが立たないとあまりに漠然と月日が過ぎていくので、秋~冬には旅立てると勝手に思い込んで生きていくことにします。

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 暇な時間を利用して、ビザの取りやすさなど諸般の事情を吟味した結果、トルコを出発点にすることに。カッパドキアでロバを手に入れ、山岳地帯を通ってイラン東部へ。パキスタンとの国境を越えるわけだが、ここが一番の懸念ポイント。外務省の治安情報では最悪のレベル4(アフガンと同じ)に指定されており、ネットにはほとんど情報がない。ただ、比較的最近、越境した旅行者によると、パキスタン側では護衛がついて(半ば強制的に)クエッタという町まで送られるらしい。クエッタは3年前に中国人男女が誘拐され殺害された都市で、そこでも移動は制限される。そもそもテロリストが潜んでいるような場所をロバと歩いていると目立って標的にされそうなので、この国境は利用したくない。

 かといって、トルクメニスタンは観光ビザの取得はほぼ不可能、アフガニスタンは危険すぎて論外(行きたい国ナンバーワンではある)、ということで、選択肢はパキスタンのみ。この国は北部以外は平地で、歩くには面白みに欠けそうなので、イラン側でロバを野に放ち、乗り物でパキスタン北部まで移動し、また新たにロバを買う…というのもありだと考えている。旅のメインはトルコ・イラン。この2国だけで1年かけてもいい。中央アジアはおまけみたいなもので、ワハーン回廊を歩いてみたいというだけ。もちろんロバ一匹で、トルコから中国まで自分の足だけで行けるならそれが一番いい。

 なんでそうまでしてロバと旅したいのか、と思われるかもしれない。私は旅がしたいというより、ロバと一緒にいたいのだと思う。自分の知らない世界を、ロバと一緒に歩く。あんなにキュートでプリティーはアニマルは他にはおらず、一緒にいて飽きない。平地は歩いても面白くないので、山岳地帯で。そのまま日本に持ち帰りたいけど、中国を横断するのは、さすがに無理だろうなあ。

私のロバは元気だろうか

 モロッコで一緒に旅したロバは元気だろうかと、ふとした折に考える。

 あのロバは、旅の終わりに、トドラ渓谷に住む遊牧民のアハマド一家にプレゼントした。アハマド一家とは、以前に1カ月以上、居候させてもらった縁がある。

 プレゼントしたといっても、アハマド一家に喜ばれたかどうかは疑問だ。むしろありがた迷惑だった恐れがある。一家はすでにラバ1頭とロバ4頭、十分な数を持っている。私のロバは「必要以上」のロバであり、ただのごく潰しになりうる。だからか、アハマドは私に「(村に住む)息子にロバをやりたい」とも言っていた。

 あのロバ自体、もともと山ではなく、ミデルトという町の郊外に住んでいたので、山暮らしはそんなに好きではないかもしれない。でも、あのロバはきっと役に立つ。身体は一回り大きく、力持ち。道端のとげとげしい草をうまそうにぼりぼり食いながら、すいすいと険しい山道を越えていく。

 「ロバロバって、名前はないんかい」と突っ込まれそうだが、名前はないんです。名前を呼ぶ機会はなかったし、必要もなかったので。

 これからトドラ渓谷に行く皆さん、もしこの記事を見て、岩山をトレッキングする機会があったら、アハマドに

「マニ・アガユール・コータロー? エヘラ?」(コータローのロバはどこ?元気?)

 と聞いてみてほしい。

 アハマドは、ツーリストによくお茶を出している70歳くらいのおじさんです。アハマドも、手が震えだしているので、アハマドの健康も心配ですが。

 アハマドもロバも、どこにいようが、元気でいてくれたら。そしてまた、いつか再会できればと思っている。

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ベルベル人のドキュメンタリー

 モロッコの山奥を舞台にしたドキュメンタリー「House in the fields」を見た。ベルベル人の少女カディジャの姉ファティマが婚約し、カサブランカに行ってしまうまでの村の様子を描いている。

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 ファティマは結婚式当日まで、婚約している夫と言葉を交わしたことがなく、「(彼が)何が好きかも知らない」という。ベルベル人の村では、そういうことがいまでも珍しくない。男が女を好きになったら、男の父が女の父に家に行き、うかがいを立てる。日本のように、恋人になり、仲を深めて、と段階を踏んでいくケースは稀だ。

 カディジャは、大好きな姉と離ればなれになってしまう寂しさを募らせていく。「そこはどんな街なの?大きいの、小さいの?」と姉にたずねる。ガディジャにとっては、自分の小さな村こそが世界の中心。カサブランカは想像もできない遠い地なのである。

 砂漠でも迷宮でもない、観光客にとっては知られざるもう一つの顔、アトラス山脈。何百年も前から変わらぬ、ベルベル人の慎ましく堅実な生きざまを映し出す。今も目に焼き付いている彼らの姿を見て、心の底から懐かしくなった。

 英国の女性監督が2017年につくったドキュメンタリーらしいが、なぜかこの1カ月間、緊急オンライン配信が決まったらしく、1900円で見られます。

www.uplink.co.jp

旅立てず

 一体、世界はどうなってしまうのか…。

 新型コロナウイルスの影響で、これから旅立とうとしているエリアが国境を閉じたまま。出発の時期が決められない。モロッコでゲストハウスを営む典子さんは、ちょうどインドを旅行中に、モロッコが海外からの出入国を制限して鎖国状態になったため、モロッコに帰れないらしい。おまけに今いるインドも外出禁止中で、外にいたら警察に罰としてスクワットや腕立て伏せをさせられるらしい。全く恐ろしいことだ。

 私はといえば、春に仕事を辞め、6月ごろに出発しようと考えていたが、早くても夏、もしかしたら来年まで待たないといけないかもしれない。

 そんな折に、モンベルから、チャレンジ支援プログラムの申請が通ったと連絡をいただいた。このプログラムは、冒険や自然保護活動などに対し、必要なモンベル商品を特別価格で提供するほか、とくに社会性が高いと認められる活動には資金・商品の提供も行うというものだ。

 モンベルからの連絡は、寝袋やテントなど、私が希望した全商品の無償提供をしていただけるというものだった。審査では、「その活動の社会性が高いかどうか」がポイントらしいが、私は正直に「ロバとの旅は、外から見れば単調に見えるかもしれない」と書いた。社会性が高いと思わないし、正直、全然期待しておらず、締め切り直前に慌てて申請書を書き上げ、締め切り1分前にWeb提出するありさまだった。最初は申請書を出すこと自体、ためらっていたが、それでも認められたのは大変な驚きだった。

 新型コロナウイルスの影響で、スケジュールを延期する可能性が高いが、延期しても実行するなら、申請通りの支援をしてくれるらしい。私としては、もちろん実行するつもりだけど、終息の見通しが全然つかないので、不安な心持で日々過ごしている。

ルート候補

 6月ごろに出発しようと思っているが、新型コロナウイルスの今後の見通しが分からず、遅れるかもしれない。専門家によっては夏まで続くとか。予定ルートのイランに関しては周辺国が国境を閉鎖しているみたいなので、旅への影響は必至だ。

 ルートを見直していたところ、トルクメニスタンのビザ取得が面倒であることが分かった。5日間のトランジットビザなら比較的とりやすいが、1カ月の観光ビザになると、現地の旅行会社の招待状と、さらにガイドが必要らしい。一応、旅行会社に「ロバと歩くつもりだが、ガイドの付き添いは可能か」と問い合わせてみるつもりだが、高額な代金を請求されるなら諦めるつもりだ。カザフスタンからカスピ海フェリーに乗ってアゼルバイジャン、というルートもあったが、一番楽しみなイランをほとんど歩けないので候補外とした。で、代わりに浮かんできたルートが↓

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予定候補ルート

 ウズベキスタンのフェルガナ盆地でロバを買い、タジキスタンのワハーン回廊、パキスタンカラコルムハイウェイを抜け、砂漠地帯を横断してイランへ。

 問題はパキスタンとイランの国境。外務省の治安情報では退避勧告が出されているエリアだ。ただ日本人旅行者は稀にではあるがいるらしく、彼らのブログを見ると、軍人に守られながら進んでいく感じらしい。できるなら危険なエリアは避けたいが、ほかにルートがないのだから、これしかないと思いつつある。

春に出発予定

 今度はアジアを旅する、という考えは自分の中で固まりつつある。中国の西端カシュガルでロバを買い、トルコまで歩く計画だ。すでに会社の何人かには伝えた。最初に話をした先輩は、私の話を聞くと、「ブハハハハ」と豪快に笑ってくれた。よっぽどおかしかったらしい。別に引き留められるとも思っていなかったが、気持ちよく笑ってくれたことで、私も踏ん切りがついた。

 私は26歳のとき新聞社を辞めて合計約2年半旅をした。旅を終え、社会復帰したのは29歳で、もう旅に出ることはないと思ったけども、何となくやり残したことがあった。それはアジアだった。南米やモロッコ、ヨーロッパには長く滞在したけども、まだアジアはほとんど行ったことがない。近いしいつでも行けるという思いがあったからだ。スペインの巡礼路やモロッコを何カ月も歩いたことで、今度はアジアをゆっくり歩いてみようという気になった。これまでの徒歩旅行で得たものがあるとすれば、歩けばどこにでも行けるという自信だと思う。シルクロードを歩いてみたいとか、そんなロマンチックな思いはない。幹線道路を避け、なるべく人が住んでいない道路をロバと一緒に歩いてみたい。

 私はどうもロバと相性がいいらしい。ロバの方はどう思っているか知らないが、私はロバと歩くのが好きだ。草をうまそうに食む姿は見ていて飽きないし、特にブドウの汁が口からぽたぽたこぼれるのを見るのが好きだ。土の道にひびく蹄の音はいつも落ち着きを与えてくれた。

 トルコからスタートし、中国を横断してロバを日本に持って帰ることも考えた。だが、あのばかでかく都市化が急速に進む中国を歩くのは嫌なので、西行きのルートにした。前回は寝込みを強盗に襲われているので、今度は大きな犬も連れて行きたいと思っている。