モロッコ遊牧民探訪記

遊牧民との生活。ロバとの旅の記録

喧騒のマラケシュ

 マラケシュにくるたび、私はいつも別の国にきたかのような錯覚に陥る。フナ広場の喧騒、溢れんばかりの観光客、充満する排気ガス・・・。初めてこの町に来たときから、この町がいっこうに好きになれない。

 スーク(市場)の狭い道には大勢のバイクが行き交う。ロバも数こそ少ないが、交通手段して存在している。どのロバも激しくこき使われているらしく、ケツが禿げ上がっている。私はそうしたロバにミカンをやって、それを美味そうに食う姿を飽きもせずに眺めている。

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(ティネリール近郊の山々)

 ああ、アトラスは良かったなあと思う。青い空、清々しい空気、透き通った川、羊の群れ。そんな場所は世界中にいくつもあるだろうけど、アトラスをアトラスたらしめているのは、あの極端に乾いた気候だろう。緑がほとんどなく、地層むき出しの岩山が連続する景観はまるで火星のようで、しかし、そんなところにも人が住んでいる。マラケシュのような喧騒とは全く無縁に、パンを焼き、ヒツジとともに生きているのだ。

 私は今年四月から一応働くことになっている。だが、時間はまだある。もう一度、アトラスに行ってみようと思った。今度はアトラスの小さな小さな村で一ヶ月くらい過ごしてみよう。

 しかし、もうじきモロッコのビザ(三ヶ月)が切れるから、いったん出国しなければならない。そのため昨日、ポーランド行きのチケットを取った。クラクフからウクライナ、そしてルーマニアハンガリーと抜けて、ブダペストから再びマラケシュ入りするのだ。楽しみにしているのはルーマニア北部。ロマがたくさん住んでる地域だし、東欧の山村部が冬をどう過ごしているのか見てみたい。ただ一つ気がかりなのが、寒さが未知数なことだ。防寒着といえば、私はモロッコの民族衣装ジュラバしか持っていない。果たしてこれだけで乗り切れるだろうか・・・。