モロッコ遊牧民探訪記

遊牧民との生活。ロバとの旅の記録

イミルシル到着

    一週間かけてイミルシルに辿り着いた。私にとって四度目のイミルシルだ。

    その間、いくつものベルベル人の村を通り過ぎた。どの村もきれいな小川が流れており、ポプラは黄色に染まり、真っ赤なリンゴがたわわに実っている。地面に落ちたリンゴは拾って食べてもいいという。リンゴをかじりながら約160キロを歩いた。

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    村人はみな物静かで、それでいて異国人である私に優しい眼差しを向けてくれる。テントを張っているとお茶を持ってきてくれたり、人の気配がない山中で、夜中、遊牧民の男が突然現れてパンをくれたこともあった。「どこから来たんだ」と聞かれ、「日本だ」と言っても通じない。誰も日本という国を知らないのである。子どもたちは好奇心をあらわにして二十数人もぞろぞろと私の後をついてくる。
    畑を耕し、あるいは羊を追い、パンを焼いて生きてきた。何百年もずっと変わらない暮らしがある。それを可能にしているのは、こうした村々があまりに山奥にあるからだろう。この一週間ですれ違った車は20台もなかった。

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    一つ誤算があった。どの村にも店がないのだ。彼らは近隣の町で週1回開かれる青空市場(ウィークリースーク)で必要なものを手に入れる。そのため食料の調達は民家からいただくか買うかしかなかった。イミルシルはガイドブックで「アトラスの秘境」と紹介されることもあるが、今の私の目からは随分開けた町に見える。カフェテリアはあるし、八百屋もある。散髪屋も、肉屋も、もちろん宿もある。一週間ぶりに飲んだコカコーラがやけに美味かった。

    一方、相棒のロバはというと、、、これはまた別記事に。

    今後の予定…当初はイミルシルからトドラ渓谷まで下る予定だったが、計画変更。アグダルからピストを通ってムスメリール(ダデス渓谷よりずっと上流の町)、山を越えてアイト・ボウグメスに行く。最後に大西洋を見て旅を終える計画は変わらない。ただ、ロバは最後の町で売ろうと考えていたが、これまた計画変更。トラックに乗せてトドラ渓谷まで運び、遊牧民の友人イハルフに託す。しかし実現するかどうか今は分からない。トラックに乗せて運ぶことは可能だろうが、そのために一万とか二万かかると言われればその場で売ってしまうかもしれない。ただ、理想としてはイハルフにロバを手渡すというのが今思い描いている旅の締め方だ。