モロッコ遊牧民探訪記

遊牧民との生活。ロバとの旅の記録

私のロバは元気だろうか

 モロッコで一緒に旅したロバは元気だろうかと、ふとした折に考える。

 あのロバは、旅の終わりに、トドラ渓谷に住む遊牧民のアハマド一家にプレゼントした。アハマド一家とは、以前に1カ月以上、居候させてもらった縁がある。

 プレゼントしたといっても、アハマド一家に喜ばれたかどうかは疑問だ。むしろありがた迷惑だった恐れがある。一家はすでにラバ1頭とロバ4頭、十分な数を持っている。私のロバは「必要以上」のロバであり、ただのごく潰しになりうる。だからか、アハマドは私に「(村に住む)息子にロバをやりたい」とも言っていた。

 あのロバ自体、もともと山ではなく、ミデルトという町の郊外に住んでいたので、山暮らしはそんなに好きではないかもしれない。でも、あのロバはきっと役に立つ。身体は一回り大きく、力持ち。道端のとげとげしい草をうまそうにぼりぼり食いながら、すいすいと険しい山道を越えていく。

 「ロバロバって、名前はないんかい」と突っ込まれそうだが、名前はないんです。名前を呼ぶ機会はなかったし、必要もなかったので。

 これからトドラ渓谷に行く皆さん、もしこの記事を見て、岩山をトレッキングする機会があったら、アハマドに

「マニ・アガユール・コータロー? エヘラ?」(コータローのロバはどこ?元気?)

 と聞いてみてほしい。

 アハマドは、ツーリストによくお茶を出している70歳くらいのおじさんです。アハマドも、手が震えだしているので、アハマドの健康も心配ですが。

 アハマドもロバも、どこにいようが、元気でいてくれたら。そしてまた、いつか再会できればと思っている。

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