モロッコ遊牧民探訪記

遊牧民との生活。ロバとの旅の記録

春に出発予定

 今度はアジアを旅する、という考えは自分の中で固まりつつある。中国の西端カシュガルでロバを買い、トルコまで歩く計画だ。すでに会社の何人かには伝えた。最初に話をした先輩は、私の話を聞くと、「ブハハハハ」と豪快に笑ってくれた。よっぽどおかしかったらしい。別に引き留められるとも思っていなかったが、気持ちよく笑ってくれたことで、私も踏ん切りがついた。

 私は26歳のとき新聞社を辞めて合計約2年半旅をした。旅を終え、社会復帰したのは29歳で、もう旅に出ることはないと思ったけども、何となくやり残したことがあった。それはアジアだった。南米やモロッコ、ヨーロッパには長く滞在したけども、まだアジアはほとんど行ったことがない。近いしいつでも行けるという思いがあったからだ。スペインの巡礼路やモロッコを何カ月も歩いたことで、今度はアジアをゆっくり歩いてみようという気になった。これまでの徒歩旅行で得たものがあるとすれば、歩けばどこにでも行けるという自信だと思う。シルクロードを歩いてみたいとか、そんなロマンチックな思いはない。幹線道路を避け、なるべく人が住んでいない道路をロバと一緒に歩いてみたい。

 私はどうもロバと相性がいいらしい。ロバの方はどう思っているか知らないが、私はロバと歩くのが好きだ。草をうまそうに食む姿は見ていて飽きないし、特にブドウの汁が口からぽたぽたこぼれるのを見るのが好きだ。土の道にひびく蹄の音はいつも落ち着きを与えてくれた。

 トルコからスタートし、中国を横断してロバを日本に持って帰ることも考えた。だが、あのばかでかく都市化が急速に進む中国を歩くのは嫌なので、西行きのルートにした。前回は寝込みを強盗に襲われているので、今度は大きな犬も連れて行きたいと思っている。